コラム

2009/7

ヤング ベトナム敬すべし

ヤング ベトナム敬すべし

ベトナムは大変若い国である。人口の6割が35歳以下の若い世代である。しかも、若者の多くが勤勉である。ハノイ市の南部クホンディン区にタンロン大学という私立大学がある。IT学部および日本語学部からなるカレッジを併営していて、学生数は総勢約7200名。ここに限らないが、ベトナムでは日本語学習熱が高く日本語人口も増えてきている。私費を含め日本に留学している学生も少なくない。大学卒でも必ずしも就職口がすぐ見つけられる状況にはない中、日本語をマスターし日系企業への就職を希望する学生の数も年々増えている。

ベトナムに私立学校があると言うと、社会主義国で私立?と驚く人もいるだろう。同校は、いわば私塾からスタートした学校で、わが国の慶応義塾大学にも似たような生い立ちの学校である。1900年代初め、東遊(ドンズー)運動で日本の私学等に学び対仏独立運動を志した記憶が底流に流れているのかもしれない。私学であるので、国はもちろんJICAのように公的機関を相手とする国際援助機関からの支援は皆無に等しい。しかし、経営に知恵を絞りながら徐々に生徒数を伸ばしてきている。同校の日本語授業のユニークなところは、普通の日本語テキストは使わず、小説や随筆を教材に、日本の文化、社会を学ぶ眼を持っている(長年現地に住む日本人教授が教えている)ことである。文法の枝葉末節をほじくるのではなく、素読・速読を基本におきながら、日本の文化、社会そして日本人への理解を培っている。すらすら読めなければ内容を理解し生きた言葉を身につける事はできないという信念が貫かれている。

日本の現代の若者にはほとんど見られなくなったかのような長幼の序、敬老精神をまだ素直に持っているベトナムの若者が、成長を実現しつつあった「右肩上がりの時代」の日本を始め現代の日本の文化・社会を垣間見させてくれる随筆・小説等を教材に、瞳を輝かせながら日本語を学んでいる。「坂の上の雲」につながる息吹が今そこにあるようだ。ヤングベトナム敬すべしであろう。同校にはハノイ近郊に進出している日系企業の中にも、若手従業員を研修のために送るとか、時々冠講座を開設するなどして支援している先も出てきている。若い息吹への支援を惜しむことなく続けていきたいものである。

古川 久継
国際局
専門:金融、地域開発他


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