コラム

2009/9

情報管理の代償

情報管理の代償

IT音痴の自分が所内のIT関連担当の一員になって以来、特に感じていることがある。それは、IT化は、果たして業務効率を上げているのか、下げているのか…。

ITの普及・発達で、私たちの生活や仕事の進め方が大きく変わった。例えば、ネットワーク環境が整っているところであれば、インターネットを通じてどこからでも世界中の情報を簡単に手に入れることがきるようになり、情報収集力が飛躍的に高まった。発信においても最近では「ブログ」なるものもあり、個人でも自由かつ簡単に情報を発信できるようになった。そして、なんと言ってもメールは、場所や相手の都合に関係なく伝達したいことを送ることができ、瞬時に相手とのやりとりもできるという非常に便利な交信手段である。このように、豊富な情報を簡単に入手できる環境になり、世の中はとても便利になった!はずである…。

情報は、物体として存在しないせいか、以前からタダと思われがちであったが、これだけ膨大な情報が飛び交い気軽に得ることができると、情報の重みを感じなくなり、ますます情報はタダであると錯覚してしまう。しかし、やはり世の中、タダほど高いものはないのである。だれにとっても使い勝手がいいということは、個人情報をはじめとする重要な情報を第三者も簡単に入手できる環境ということになる。最近は度々、顧客情報漏洩のニュースを耳にするようになった。原因は、悪意をもった者の仕業のほか、ソフトの問題、本人の不注意によるパソコン紛失等とさまざまであるが、いずれにしても情報漏洩の恐ろしいところは、情報が第三者に渡ってどのように使われるのか、そしてその影響・被害がどこまで広がるのか計り知れず、漏洩元からの損害賠償だけでは解決できない場合もありうるという点である。以前、テレビドラマでよく見た証拠写真を撮った本人を捕まえてネガを回収できればめでたく解決、という訳にはいかず、一度インターネット上に流れると、もう回収不能であろう。

また、IT関連機器も、消費者ニーズに応え小型化が進み携帯しやすい形に進化している。ところが、小さいと紛失しやすく、誰かに情報を読み取られる可能性が高まったともいえる。

ITの利便性の高さ故に派生した問題が顕在化したことで、防御策や規制といった情報を管理する必要性が出てきた。PCには厳重なセキュリティシステムを入れて安易にデータをコピーできないようにする、ログをとり監視できるようにする等の対策を、決して安くないコストと人による確認作業の手間をかけて行うのである。

また、業務への影響も避けられない。例えば、万が一に備え第三者がデータを読めないよう機器やファイルにパスワードを設定するものの、関係者間でパスワードの周知が徹底されず混乱を招いたり、月日の経過によってパスワードを忘れ資料をまた一から作成したり、客先でのプレゼンで電子データの資料が先方のPCに反応せず、商機を逃す等のマイナスの影響が出てきた。会社によっては情報漏洩防止策としてメールでの資料送付を禁止し、FAXを利用する方法をとることにしたが、送付先を間違わないよう常に複数の人が見守る中でFAXを送信するといった話も聞く。効率性・コスト削減効果を高めるはずのIT化が、情報管理によって後退現象を招いているとも受けとめられる。

しかし、今や企業は自社の効率性等の優先よりも、まずは社会的責任を果たすことを一層強く求められる社会になっており、今後、効率性とは、顧客情報の管理体制を万全にしたうえで図られるものという概念として、常識化していくのだろう。

ITについては当初に比べ効率性は低下しコストは嵩むかもしれないが、社会全般が何事も費用対効果を最優先していた時期に比べれば、費用対効果だけでは解決できないことが存在するということが明らかになっただけでも、よかったのかもしれない。

佐藤 友美
調査局
専門:地域振興、PFI


ページトップへ