コラム

2009/12

水という商品

水という商品

その昔、「日本人は水と安全はタダだと考えている」といわれていたが、もはや安全はタダではないことは明白になっている。 さて、一方の「水」である。皆さんの家庭や職場では水道水を利用していると思うが、例えば、ご自身の家庭の1ヶ月あたりの水道利用料がいくらであるか、ご存じだろうか? もちろん、節水意識の高い方や家計管理に長けた方であれば、およそいくらぐらいの水道料を毎月支払っているか知っているだろうが、恐らく、多くの人はなんとなく数千円ぐらいだろう、とか、あるいはひょっとしたら全く知らない人もいるかもしれない。

水道料金というのは、自治体毎により料金が異なり、また、結構差がある。ある新聞発表のデータでは、最も水道料金の高い自治体と低い自治体の差は7倍にもなっているという。いずれにしても、毎月の水道料金の数字は知らなくても、確実に使用料金は支払っているのである。タダではない。

一方で、皆さんが良く知っている水の値段もある。コンビニエンスストアやスーパーで売っているペットボトルの水である。メーカー等で差があるにしても、通常のものであれば100円~100数十円といったところであろう。場合によっては、ミネラル等を添加し高機能を謳っている高価な水もある。

ペットボトルの水の登場は、「水はタダ同然」と考えていた日本人の意識を、「水は買うもの」に変化させた。当初は、どちらかというと若者が格好いいという考えで、ファッションとして流行していたが、今では老若男女、だれでもペットボトルの水を買っている。 ここに、大きな転換があるように思う。単に蛇口から出ていたものを、ペットボトルという入れ物に詰めると、不思議なことに一つの商品として出来上がってしまっていることである。もちろん、市販のペットボトルの水は源泉を選んだ天然水であったり、ミネラルが豊富であったり、水道水とは異なるが、いずれにしても飲み水である。最近は、各自治体が浄水場の水を水道管で各家庭に配る変わりに、ペットボトルに入れて出荷し、人気を博しているブランドもあるそうだ。これらは、蛇口から出てくる水と、塩素処理がしていないだけで、ほとんど変わらない。なぜそんなことをするのか?

それは「ペットボトル」に入っているというだけで、「商品」として売れるからである。実際、節水意識の高まりと電化製品等の節水技術の向上、地域によっては人口の減少という背景から、水道収入は減少の傾向にある。生活インフラであった「水道水」がちょっとしたきっかけでペットボトル水という「商品」となり、多くの人々が自発的に購入するのである。蛇口から出る水は「出て当たり前」、月の利用料金すら良く認識していない。一方のペットボトル水はスーパーやコンビニで100数十円を出して「買う」のである。

飲み水は、そのうち全てペットボトルで、あるいはウォーターサーバーや通信販売等で提供されるようになるのだろうか。いや、飲み水以外にも、生活用水として我々は多くの水を消費している。生活用水以外にも農業用水や工業用水も含め、飲み水以上に多くの水を必要としているのである。

身近な水道水を改めて調べると、多くの課題に直面していることに驚く。先にあげた利用量の減少は、水道水を供給している公営企業における利益の減少につながっており、さらに、多くの浄水場等の水道施設は耐用年数を迎えていることから設備投資に向けた資金確保も必要である。また、水質・水源の問題、水道運営に関わる人員や技術の問題、自治体によってはダムの問題、環境への配慮等々。国外に目を向ければ、基本的な飲み水を確保できない地域が多く残っているし、世界的な異常気象で水不足を懸念する声も高まっている。

空気のようにあたりまえに存在していたわが国の水は、ペットボトルに詰められたことで「商品」として認識され、今は、電気やガスが民間企業により供給されるようにビジネスとしての可能性も議論されはじめている。これは水だけに限らず、道路なども含めたわが国の公共インフラシステムが転換期を迎えていることの表れなのではないだろうか。 さて、冒頭の水道料金であるが、社団法人 日本水道協会の調べでは、全国の家庭において月20m3を使用した場合の水道料金の平均は2,188円(平成20年3月30日)だそうだ。皆さんのご家庭の水道料金はいかがであろうか。

望月 美穂
調査局
専門:PPP、都市・地域政策


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