コラム

2010/2

若者のクルマ離れ

若者のクルマ離れ

もう10年も前の話だが、2000年当時、社会人2年目だった私のまわりでは、俄かにマイカー所有率が上昇し始め、クルマはいつも話題の中心にいた。私自身も、一年そこそこの会社勤めで大した蓄えもないまま、頭金以外の全てを借入調達に任せ、自身の年収を上回る額のクルマ(といっても中古車だが、)を背伸びして手に入れたのだった。無論、購入後は借入金の返済、マシントラブル、維持費用等さまざまな難題に直面し、その都度自分の浅はかさを思い知らされることになるのだが・・・。

時は移り一昨年、私はたまたま某企業の入社2年目のメンバー約40名の中に加えてもらい、一緒に研修を受講する機会を得た。その席上、研修講師を担当していた大学教授が「この中でクルマを持っている人?」と問いかけたのだが、反応したのはその場にいた入社2年目のメンバー中、ほんの3名程度に過ぎなかったという事実を目の当たりにすることになった。

この時私は、自分達の頃とは随分違うものだなとただ単に驚いただけだったのだが、後日その事実を裏付ける興味深いデータに遭遇する。それは日本自動車工業会が2009年3月に発表した「クルマ市場におけるエントリー世代のクルマ意識」の調査結果である。調査結果によると、今後数年内に社会人となりクルマを購入し始める層、つまり現在の大学生にとって、興味・関心のある製品・サービスは、1位がパソコン、以下ファッション、携帯音楽プレーヤー、通信機器と続く。さてクルマは?アニメ・漫画(8位)、ゲーム(9位)、語学・資格試験(15位)よりもさらに下位、まさかの17位という状況なのである。参考までに以前の大学生にとってクルマへの興味・関心は?現40~50代で7位、現20~30代で10位という結果になっており、何れの場合も現在の大学生よりはクルマへの興味・関心が高いことを表している。また、調査結果では対象となった現在の大学生世代の生活価値観について以下の様に触れている。「努力するより無理をしない生き方・仕事スタイルを志向する傾向が強く、将来の不透明感や、無理をしない価値観を反映して、お金を使うことに消極的で、トレンドや他人の持ち物に興味を持つ人が減っている。」

強引かもしれないが、要するにイマドキの若者にとっての生活価値観とは「簡単に手に入る範囲のもので楽しめばいい」であり、なるほどこの調子ではクルマ離れが今後一層加速することは想像に難くないだろう。たしかに、1990年代以降の景気の長期低迷の中で育ち、これから社会に出ようとする今、未曾有の景気悪化に直面し、将来の雇用、収入に対する不安感、社会への閉塞感を抱えた状態では、背伸びしてクルマを手に入れることなどあまりに非現実的なのかもしれないし、携帯電話、インターネット等コミュニケーション手段の多様化でクルマを所有すること自体の価値観が薄れていることも否めない。またその一方では、いざ「クルマを買おう」と思ったところで、現在のクルマ市場を見回せば、便利で環境に優しく企業の利益にも貢献するエコカーばかりが幅を利かせ、心の底から手に入れたいと思うクルマになかなか出会えないという意見も少なからずあるのだと思うが・・・。

このあたりのクルマを取り巻く環境改善、魅力的なクルマづくりは専門家にお任せするとして、話を再び10年前に戻させていただく。この時も今ほどではなきにせよ不況であることに変わりはなかったし、先に述べた通り若者にとってクルマを所有することには、やはり多大な負担と犠牲が伴った。それでも必死でクルマを所有し、維持し続けたことのおかげで私は数多くの感動に巡り会えた。オーバーだが負担と犠牲を伴って得た経験は人生を盛り上げたし、そういう経験が自身のステップアップにも繋がったものだと信じている。

だから、今敢えて若者の皆さんには少し背伸びをしてクルマを所有することをお勧めしたい。無理をしない生き方、お金を使うことに消極的な姿勢が決して悪いわけではないが、ここはひとつ積極的に、若い時しか出来ない無理や冒険(社会勉強)を経験してみてはどうだろうか?週末、自分だけのお気に入りの相棒を操り、五感をフルに活用して運転する楽しみを味わう。携帯電話、インターネットに管理された5日間からの脱却はもとより、行動範囲が広がり、新たな発見等の得られる感動も大きいと思うのだが。

間嶋 健太郎
ソリューション局
専門:経営マネジメント、ファイナンス支援他


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