コラム

2010/6

医療人を育てるヒント

医療機関の中では「患者様の立場に立って」という言葉をよく耳にするが、そんなことが果たして可能だろうか?もちろん重要なことであるが、私は相当難しいことだと思っている。この言葉を平気で口にする人は、本当は実践出来ていないのではないか?

例えば、注文住宅メーカーの営業マンは一生の内に何人の新しい顧客と会うのだろうか?約10,000人として(2人×200日/年×25年)、顧客にとって家を建てることは一生の内に1度か多くても2度であろう。まさに「1/10,000」と「1/1」であるが、この10,000人が家を建てる事情や思い入れ、要望、家族構成等は千差万別であり、10,000通りの家が建つことになる。顧客の立場に立てる本当のプロとは、この「1/10,000」を自分の中で少しでも「1/1」に近づける努力を惜しまない人のことであると思う。

一般の人にとって、入院・手術ということは一生の内に何度もないことであるが、医師や看護師にしてみればそれが仕事なのだから日常茶飯事である。だから「患者様の立場に立って」とよく言うが、それは非常に難しいことであり簡単にできることではない。大切なことは、患者様の立場に一歩でも近づくように努力することである。

人の評価の対象となる「能力」とは何であろうか?医療機関は専門職集団であり、資格さえあれば一定の評価を受けるという部分もあるが(保有能力の評価)、それ以上に重要な要素は、その有する能力をいかに効果的に活用しているか、という視点からみた「発揮能力」を評価することではないか?

もちろん、発揮能力だけで評価することは妥当ではない。様々な評価要素(現在の保有能力、能力向上プロセス、発揮能力等)をバランス良く組み合わせて評価することが重要となろう。また、職位や職務経験等に応じて、プロセス重視→発揮能力重視というように、段階的に評価要素のウェイトを変化させていくことも必要である。

人材育成に関して、医療機関が異業種に学ぶべき事柄も多いのではないだろうか?例えば、「接遇」は職種を問わず社会人として身に付けておくべき最低限のルールであるとともに、患者様サービスの中でも非常に重要な要素である。何故「接遇のプロ」とされているホテルや百貨店等に学ばないのか?多少の違いはあるにしても、彼らが持つ接遇ポリシーやノウハウ等は大いに参考になるだろう。医療機関という狭い殻に閉じこもっている限り新しい発想はなかなか生まれないし、真の患者様サービスも実現できないのではないか。

そこで、人材育成カリキュラムの1つの手法として、職員を異業種企業(ホテル・百貨店等の他、医薬品・医療機器等の取引先や健診実施先企業等)に一定期間(まず短期、徐々に長期も検討)派遣するというメニュー(いわば他流試合)を実践してはどうか。人材育成面に加え、受入先との関係強化という副次的効果も期待できよう。

丸田浩一
調査局
専門:医療・福祉


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