コラム

2010/10

地域の個性を磨く~B級グルメブーム~

私は、親の転勤で、学生時代の一時期を北海道で過ごした。北海道では学校行事の一環として、炊事場の備わった公園などに出向き、野外で調理をする炊事遠足というものがある。その炊事遠足で焼肉をした時のこと。それまで関東地方で過ごしてきた私にとっては、焼肉といえば牛肉が常識であった。しかし、見渡す限り、どのグループも焼いている肉は羊ばかり。いまでこそ全国区となったジンギスカンであったが、当時、ほとんど食した経験のない私には、いささか驚きであった。友人曰く、北海道では、野外で焼肉といえば普通はジンギスカンなのだとか。自分が常識と思ってきた食習慣が、地域によって常識ではないことを実感した瞬間であった。

北海道でジンギスカンが広まったのは、昭和に入ってからとされている。第一次世界大戦時、羊毛の輸入が禁止となり、国内で軍服用の羊毛を生産するため、日本政府は、主に北海道において羊の飼育を推奨するようになった。こうした中、昭和7年北海道庁種羊場が設置され、綿羊事業の普及が図られ、羊毛以外に食用として羊を活用するためのメニューとして広まったのが、ジンギスカンであると言われている。

ジンギスカンが北海道における綿羊の歴史の産物であるように、地域の食習慣は、その地域が辿った歴史や文化によって培われてきたものである。食を知ることで、地域を知る。反対に地域を知ってもらうために、食を伝えていく。近年ブームとなっているB級グルメも、まさにそうした食を通じた地域交流であり、地域の文化や歴史を知ってもらうための地域活性化の有効な手段となる。B級グルメは、安くておいしい地元の人に愛されている地域の名物料理や郷土料理、まさに普段着の味である。そうした気軽さが、多くの人に親しまれ、今日のブームを呼んだのであろう。

一部報道によると、昨年開催された第4回の「B級ご当地グルメの祭典!B-1グランプリ」(以下、B-1グランプリ)でグランプリに輝いた「横手やきそば」のご当地、秋田県横手市では、横手やきそばを食べようと観光客が押し寄せ、宿泊施設の利用が増加するなど、約30億円の経済効果があったと言われている。

今年も、第5回のB-1グランプリが、9月18日(土)、19日(日)の日程で開催された。過去最多の46団体が参加し、厚木の会場には、地域の味を求め、2日間で約44万人が訪れた。かくいう私も見学に訪れた一人である。会場には、地域の食文化を多くの人に伝え、まちのPRにつなげたいという、出展者の地元への愛着、想いが漲り、熱気に満ち溢れていた。グランプリ投票の結果に関わらず、出展者たちのそうした熱い想いは、来場者に十分伝わったに違いない。

B級グルメブームは、これまでその地域で常識とされてきたものの価値を再確認し、歴史や文化に裏づけされた地域の個性として、いかに地元の人達が情熱と愛情をもって磨きをかけていくことができるのか、そこに地域活性化の手がかりが隠されていることを我々に示唆しているように思う。B級グルメという食を通じた地域活性化のチャンスを一過性のブームで終わらせないためにも、このチャンスを大いに活かし、地元の人たちが食という地域の個性を新しい歴史、文化としてどのように育み、発展させていくのか、それがB級グルメにわく地域の今後の課題といえるのではないだろう。

加茂隆子
調査局
専門:地域振興、PFI


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