コラム

バックナンバー

2011/03

箱根駅伝を見ながら考えたこと

 筆者は、平成に入ったあたりから、箱根駅伝を往路4区にある酒匂橋という橋の上で見続けています。今年の酒匂橋の人出は例年よりも多かったように感じました。景気回復が思わしくないため、多くの人が旅行や遠出を控えて、代わりに近場の箱根駅伝を見に来たのかなあと思います。
 この酒匂橋がある往路4区は復路7区とも言います。でも復路7区という意識はあまりないですね。また往路2区は「花の2区」と呼ばれていますが、復路9区には愛称はありません。復路では、唯一6区だけが「箱根の山下り」として別名で認知されています。単なる番号表記よりも固有名詞を使った方が、どの場所だったっけと考えなくても、その区間の情景が頭の中にすぐに浮かんできます。
 そう言えば、箱根駅伝って関東学生陸上競技連盟が行う単なる地方大会のはずです。昭和時代は、テレビ放送も、往路、復路ともに各45分くらいしか放送していなかったと記憶しています。しかし、今では両日ともに、スタートからゴールまで全国ネットで生放送するようになり、そのため一地方大会がお正月のキラーコンテンツに成長を遂げています。また、一般紙でもスポーツ新聞でも雑誌でも箱根駅伝を取り上げています。全てはテレビの全国放送のおかげです。
 気楽にテレビのおかげと書きましたが、朝8時スタートで全員のゴールが14時頃という一日6時間超の生放送を支えるのは大変なことです。これまで日本テレビが単独で制作しているのだと認識していましたが、全国各地の日本テレビ系列局が協力して作り上げているんですね。放送の中で言っていました。確かに、箱根山中のどこかの地点で、背中に南海放送(愛媛県)という文字が入ったジャンバーを着た方が映りました。オッ、南海放送だ。筆者は昨年5月まで愛媛県松山市で暮らしていたので、懐かしさがこみ上げてくる映像でした。番組の最後に流れる文字情報だけではなく、各社を場面場面で映してあげると喜ぶ人や懐かしがる人が多いのではないでしょうか。かつては都会の停車場で故郷を感じたようですが、今はお正月の箱根駅伝の中に故郷を発見する時代です。
 ところで、テレビの全国放送があり、その視聴率や注目度も高いことから、全国の中長距離高校生ランナーが箱根駅伝に出場することを夢見て練習しているという報道もよく目にします。大学サイドも全国からスカウトしてくるのでしょう。走っている選手の出身高校をみると、長野県の佐久長聖高校、熊本県の九州学院高校、福島県の会津高校、愛媛県の宇和島東高校など多様です。この地方イベントは、素材も演出も全国に求めている、そんな印象です。
逆に、各地の方々にすれば、このイベントを利用しない手はありません。テレビ放送を見ていると、時々登場する若手アナウンサーが、ドラマ仕立て効果を狙って、ブレーキ発生とか襷をつなげないとか絶叫しています。そこで、そのパワーを、走っている選手のご当地の紹介に切り替えることを提案します。ご当地に関連付けやすい固有名詞を連呼してもらいましょう。
 また、走っている選手の名前を紹介しているテロップには出身県と高校名も入っていますので、その横に、出身地の観光地や食材など地域資源の映像を入れて、視覚として全国の視聴者に訴えるのも効果的です。その素材も選手本人やその家族が選べば、実感あふれる素材の提供になります。インターネットでのご当地検索よりも確実に本物に出会うことができます。例えば、青山学院大学のメンバーには熊本県の九州学院高校出身者がいました。最後の最後に抜かれてしまった城西大学には愛媛県の宇和島東高校出身者がいました。独断ですが、熊本の地域食材と言えば馬刺しに辛しレンコン、宇和島の地域食材と言えば鯛丼にじゃこ天。こんな写真を入れてほしいものです。
 皆さん、熊本に、宇和島に、行きたくなりませんか。食べたくなりませんか。

a a

 最後に、テレビで見ているだけでは分からない点もご紹介します。現地で見ると多くの発見があります。
 選手に伴走する車は、すべてハイブリット車のプリウスになっています。走っている選手への配慮、環境負荷低減への貢献、これはアナウンサーが言わない限り気が付かないことでしょう。伴走車でもうひとつ。予定通りの順位になっていないのか、プリウスの中で憮然とする伝統校有名監督の顔が見えました。監督の表情に注目してみるのも面白いですよ。巨大なキラーコンテンツの箱根駅伝も多様な人間性の塊なんだと再認識できます。

門松功
調査局
専門:地域振興、PPP


バックナンバー


ページトップへ