コラム

バックナンバー

2011/06

環境負荷低減への気づき

私どもは、(株)日本政策投資銀行と連携して、いくつかの地方銀行における環境格付融資立ち上げのお手伝いをしております。紙幅が限られているため乱暴に書きますが、環境格付融資とは、環境配慮型経営を推進する企業に対して、金融機関が設定した基準によりその内容等を評価し、金利の優遇などによって、金融面から各企業の取り組みを支援していこうとするものです。
地域密着型金融機関である地方銀行の特徴の一つとして、顧客に中小企業が多い点があげられますが、環境格付のためのヒアリングに伺うと、「エコプロダクツ?作ってないなあ」「環境配慮?特に何もしてないけれど」という企業が多いのも事実です。しかし、そういう企業の話をよく聞いてみると、環境負荷を低減させる工夫をした事業活動を遂行している企業もまた多いのです。

キーワードは「無駄の削減=費用の削減」。具体的には、コスト削減が省エネ・省資源化等の取り組みを通じて実現されている事例が多くみられます。概して、コスト削減の取り組みは環境負荷低減に繋がることが多いのです。コストの削減は利益率の向上に繋がりますが、以前と同じ生産活動を行うために必要な費用が少なくなる、あるいは、以前と同じ費用でより多くの生産活動が行えるようになるのであれば、概念としては「生産性の向上」とも表すことができます。
環境配慮型経営などというと敷居が高いように感じたり、ウチには関係ないと思われたりするかもしれませんが、コストの削減・生産性の向上という観点に立てば、取り組みやすくなるのではないでしょうか。

さて、東日本大震災の発生から3カ月近くが過ぎようとしています。今回の震災は、広域・広範・長期に渡る点が大きな特徴と言えるでしょう。広域性とは被災エリアのことですが、広範・長期というのは、サプライ・チェーンの寸断や電力供給不足による生産・消費活動への制約に起因する、”非”被災地域・主体への多大な影響を指します。被災地域を支えなければならない”非”被災地域・主体への影響は懸念されるところであり、電力需要のピークをいかに抑えるか、目下の重要な課題の一つとなっています。
事業活動に制約が設けられている業態もありますが、概ね、企業・家庭ともに節電意識が高まっているように見受けられます。”非”被災地域のご家庭では、「電気ご使用量のお知らせ」の4月、5月の電力使用量=電気料金がかなり減っていたのではないでしょうか。事業活動への制約があった事業所は別として、非製造業系の企業・事業所でも同様かと思います。
我が国は、2020年までに1990年比で温室効果ガスの25%削減を表明しており、家庭やオフィスでの取り組みも大きく期待されているところですが、今回、電力使用量だけみても、その気になればけっこう減るものだなあ、と感じられた方は多かったのではないでしょうか。冒頭の話に戻ると、企業にとっては、コストの削減=環境配慮型経営への第一歩という、気づきを得るきっかけになったのではないかと思います。

今回の震災は甚大な被害をもたらしました。得られた様々な教訓を無駄にすることは許されないでしょう。企業も家庭も、電力供給の制約を機に、無駄なエネルギーの消費を抑止するという成功体験を得たのですから、将来、平時に戻ったときには、環境負荷低減に思考スイッチを切り替えて、引き続きエネルギーの浪費には注意を払いたいものです。
ただし、いくら電気料金を節約したいからといって、作業環境や生活環境を悪化させては、生産効率や健康状態は悪化します。従業員や家族が体調を崩しては元も子もありません。企業について言えば、製品・サービスの品質低下に繋がらないような工夫も求められます。

今回の震災を踏まえ、企業・家庭ともに、できることから環境負荷低減の取り組みを進めていくことで、環境配慮型社会への動きが加速されることを期待します。

坂野航
インフラ・環境グループ
専門:インフラ、環境


バックナンバー


ページトップへ