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2011/08

パブリックアートの力量

パブリックアートというと、どのようなものが思い浮かぶでしょうか。
よくあげられるのは、ニューヨークにある「LOVE」の彫刻です。現地でこの作品を見ると、いつもそこにあり、見る人の気持ちに語りかけ、心をちょっと温めてくれるパワーのあるパブリックアートだな、と感じます

日本の街にもたくさんのパブリックアートがあります。
日本におけるパブリックアートのはじまりは野外彫刻であると言われています。戦後に平和や自由を象徴した男女の裸像や母子像が設置され、1960 ~70年代には都市景観の形成手段、文化の時代・地方の時代の流れにより、「彫刻のある街づくり」として日本各地で多くの野外彫刻が設置されました。バブル崩壊後はパブリックアートへの関心が薄れたように見えましたが、ファーレ立川やさいたま新都心、六本木ヒルズや東京ミッドタウン等、設置主体や設置背景、設置空間の状況が違えども、パブリックアートを目にする機会は増えているように思います。最近では、パブリックアートとメディアアートを融合したデジタルパブリックアートというジャンルも出現しており、昨年、羽田空港で展示されました。私も展示の1つである大きな透明人間型の風船がふわふわ浮いている作品を見上げ、その姿に親しみを感じつつ、不思議な感覚にとらわれたことを覚えています。

わたしたちは、アートと接することで新しい感覚に出会ったり、美しさに心が癒されたり、様々な価値観をつきつけられることで自分自身の受容力の範囲を広げるきっかけを与えられるのではないかと思います。パブリックアートは、感想すら喋りづらい美術館のように緊張感を持つことなく自由に接することができ、また、美術愛好家ではなくとも、ふとしたところで出会うことができるアートなのです。

それゆえパブリックアートは、それが置かれた場所との関係性が非常に重要です。しかしながら現実には、自転車置き場化している広場であったり、公園奥の人通りがほとんどない茂みの中であったり、クルマの交通量が多い通り沿いであったりと、人に見向きもされない舞台に立たされている作品が数多く存在します。これはその作品にとっても、その街の人にとっても、なんとも悲しいことだと思います。置かれる場の状況をしっかりと検討せずに設置されたパブリックアートは非常に多いのです。必要なメンテナンスもされず、輝きも存在感もなくした駅前彫刻を助ける方法はないものかと、考えています。本来パブリックアートとは、置かれた空間と影響し合い、その空間を明るく豊かにし、それが街の魅力に繋がっていくような力を持つべきものであると考えます。そして、そのような作品こそが、力量あるパブリックアートなのではないかと思います。

この夏、遊びに訪れる街のパブリックアートに少し目を向けてみませんか?
その街に、その場所に、どのように佇んでいるでしょうか。見る人にさまざまな思いを触発させるような、そのパブリックアート独自の力量を発揮できているでしょうか、また、力量を発揮できる舞台にしっかり立っているでしょうか。

横山有理
ソリューショングループ
専門:BCP 、PFI・PPP、指定管理者制度


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