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2012/02

「古き良き時代」

どの国、どの時代にも「古き良き」時代として理想的に想起される時代がある。
例えば古代中国の戦乱の時代にはさらに遠い昔にいたとされる王の治世が、ヨーロッパ中世末期、ルネサンスにあっては古代ギリシアがというように。近くはアメリカのティーパーティーグループもそれにあたるだろうか。彼らはアメリカが欧州から独立を果たそうとする時代を自身のよって立つ場であると、そのグループの名で示している。
日本ではどうだろう。
テレビ・雑誌や映画を見るに、現代日本で「古き良き時代」として人気があるのは坂本竜馬(ドラマ「仁」にも坂本竜馬が出ていましたね)や「坂の上の雲」の幕末~明治時代、そして戦後から立ち上がる昭和30~40年の高度経済成長の時代(「三丁目の夕日」の時代)、この2つがどうも取り上げられることが多いように思う。あの頃の日本は元気であった、日本人は夢を持っていたと。
後者については、仕事柄、耳目に近しいところもある。多くの地域で「昔はこの商店街はにぎわっていてね」、「子どもがたくさん遊んでいた」、「夜になると飲み屋はにぎやかだったよ」という話をしばしば聞く。1980年生まれの私の経験したことのない時代がそこにはあるようだ。我々の世代は1980年代後半から90年代前半のバブルの景気でさえも実感がない。

1月30日、私の誕生日だったこの日、国立社会保障人口問題研究所が人口推計を発表した。
推計(中位推計)によると2010年の総人口約1億3千万人は2050年には1億人を切るという。この2010年から2050年の間に、年代別では0~30代の人口が40%、50~60代で20~30%減少する一方で、70代以上の人口は50%増加し、高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)は23%から39%にまで至るということである。実に5人に2人が高齢者ということになる。日本全体が、現在国内で高齢化が進んでいるといわれる地域と同レベルの高齢化水準となるということだ。
この世界に先駆けて進む人口減少・高齢化にどのように対処していくか、世界で注目されている。

先程も書いたとおり私は1980年の生まれだから、2050年はちょうど70歳、5人に2人の高齢者のまさにその1人になるわけだ。私の30歳から70歳の40年、この国の人口減少・高齢化をわが身で体験することになる。
これは喜ぶべきことか、忌むべきことかともついつい考えてしまうが、2010年に生まれた私の娘は2050年に40歳になる。彼女が成長し大人になっていく社会を良いものとするのに、不平不満ばかり言っていられない。
2050年に娘たちから、あなたたちはよくやってくれたと思ってもらえるような、そしてこれからの時代を将来の人々が「古き良き時代」として思い出すようなものにしていきたいものだ。
東日本大震災からももうすぐ1年が経つ。震災復興も含め、やるべきことはたくさんある。そう思いを新たにした、今年の誕生日だった。

倉本 賢士
パブリック調査グループ
副主任研究員


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