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2012/05

ある地方都市の商業開発事情

上京してから、普段コンビニのような駅前ス―パーで買い物をしていると、ムダに広い郊外のショッピングセンターが懐かしくなることがある。食料品も、服も、本も全てが揃う大型ショッピングセンター。最近では映画館まである。足りないものはなにもないのではないかと思うほど、完璧な空間であるが、受け入れがたい存在でもある。

私は福岡市近郊の人口9万人程度のベッドタウンの出身である。

今年、同等規模の隣町の国道沿いに人気の北欧家具チェーンとショッピングセンターがオープンした。そもそも、私の出身市も含め、商圏であろう福岡市を除いた近隣市町村の人口規模は多くても10万人程度の市町村ばかりなので、新たなショッピングセンターの進出によって、既存のショッピングセンターやスーパーマーケットの存続が危ぶまれる。

かつては、地元商店街・個人商店とショッピングセンターの大型店の客取り合戦であったが、ここへきて、ショッピングセンターなどの大型店舗同士の争いになりつつある。現に、古いショッピングセンターからテナントが撤退し出しているのが現状である。

一方で、ショッピングセンター出店に合わせた周辺部の大型開発によって、ファストフードなどのチェーン店に混じって、個人店主によるカフェや美容室なども開業し、明らかに以前と比べ、活気が出ている。このような小さな滲みだし効果ではあるが、新たな地元発の商業も生まれている。

また、より大きな地元主体の商業開発として、道の駅がある。私の出身市は、漁業町との合併により、豊かな海の幸が市の新たな財産となった。それに合わせて、旧市の農作物も自慢である。帰省のたびに、道の駅に買い出しに行くが、オープンから数年たっても、観光バスでやってくる客など、地元のみならず、観光客にも愛されている。

このように商業開発において地元内外から二つの傾向が同時進行し、住民・消費者もこれらを選択し、使い分けている。今後も、街の成長や市場などのバランスを取りながら、選択肢を変化させ、継続していくことが、結果的に街の面白さ、個性につながっていくのだと思う。次の帰省時には、道の駅を経由し、受け入れがたさを感じつつ、きっと新しいショッピングセンターに行ってしまうだろう。

永島 千恵
地域本部 地域振興部
副主任研究員


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