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2012/08

地下経済についての考察

最近はベトナムやインドネシアなど東南アジア方面に出張に行く機会が多いが、出張のたびに「この国の人たちの実際の所得水準はどの程度なのか」といつも気になる。一人あたり所得や、実際の給料水準から推測するよりも、彼らの購買力が大きいように見えることが多いためである。

ベトナムを例にとってみると、2010年の一人あたりGDPは1224ドルであり、一般的な公務員の給料も月100ドル前後と聞くが、それ以上の所得を得ているようにしか思えないことは多い。
車(高級車ではない)の価格は一般的に40,000~50,000ドルのようだが、それでも車を持っている人は多いように感じるし、現地の方と会議をしていると自分以外全員が500~700ドルはすると思われる最新のスマートフォンを持っているということもある。
ベトナムに限った話でもない。カンボジアではレンタカーで移動していると、高級車に四方八方囲まれて唖然とした。他の国でも似たような事例には事欠かない。

一人あたりGDPなどの統計に出てこない所得が相当あるものと推測するが、どうやらその推測は間違っていないらしい。
統計に出てこない経済活動を地下経済と呼ぶようだが、GDPと比べた地下経済の規模が、日本では9%前後と推測されているのに対し、ベトナムは16%、インドネシアは19%とされている(とはいえ、ロシア47%、グルジア69%などと比較すると小さいほうである)。

簡単に言ってしまうと、税務申告されていない所得が相当あるということであろう。
そういえば、自分自身が現地で行く店でも現金払いをしてレシートが出ないことは多いし、受け取ったとしても手書きだったりする。これらが正しく税務申告されるとは限らない。副業に熱心な人も多いが、副業からの収入は税務申告されているのだろうか。

地下経済の大きさは、何を意味するだろう。

まず、彼らの実体的な経済力は統計から見るよりも大きいと言えるだろう。地下経済まで含めた場合、実際の所得額は統計よりも20%程度大きいことになる。マーケットとして見た場合、統計に出てくる数字だけで過小評価しないほうがよいということになる。
政府の立場から見れば、GDPが増えても政府の税収増加には繋がらないことになる。公共サービスの低下につながったり、長期的な成長の阻害要因となるのかもしれない。最近話題にのぼりやすい南欧諸国は地下経済の規模が欧州の中でも大きく、それぞれ20~30%程度と推測されている。

日本の会社で働く会社員の身としては地下経済には関わっていないと信じているが、実際にはどうだろう。
出張した国でも地下経済を大きくしないように...などと考えつつも、相変わらず地元の人が集まる小さな店で食事をし、現金で支払いをしている。

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地下経済の規模についての数字は以下を引用。
Shadow Economies and Corruption all over the World: Revised Estimates for 120 Countries, Friedrich Schneider and Andreas Buehn (2009)

畔田 弘文
インフラ本部
主任研究員


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