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2012/10

富士山の世界遺産へ向けて

この夏、富士山に行ってきた。行ったといっても、山頂登山に挑んだわけではなく、ドライブで五合目まで行ってみたというだけである。中央自動車道の河口湖ICをおりて、富士スバルラインに入る。料金所を抜けると、次第に大きくなる雄大な富士山の姿についつい目が行ってしまう。目的地である五合目駐車場は混雑していたため、手前に設置されていた駐車スペースに自動車を停め、3kmほどの疑似富士登山体験を行った。今年も猛暑日が続き、その日も東京では35度を超えていたようであるが、標高2,300m近くある五合目の気温は20度を切る程度であり上着なしでは肌寒い位であったが、眼下に広がる大パノラマを見ながら30~40分程時間を楽しむことができた。しかし、非常に残念なことに出くわした。自動車を停めた時である。駐車スペースに空のペットボトルが転がっていた。また、あちこちに煙草の吸殻も落ちていた。「ゴミは持ち帰る」のが前提で、ゴミ箱の設置が少ないのも原因なのだろうか。しかし、一方では落ちているゴミを拾っている人も見かけた。
これが富士山のゴミ問題の一端なのであろうか。

1990年代初めから富士山の世界遺産への登録運動が行われている。世界遺産は、世界遺産条約で定義された「人類共通の遺産」であり、文化遺産、自然遺産、複合遺産の3つの種類に分類されている。2012年7月現在の登録数は962件、条約締約国は189カ国である。日本では16件(文化遺産12件、自然遺産4件)の登録がある。

富士山は当初、自然遺産への登録を検討されていたが、年間3千万人を超える観光客が訪れる一大観光地であるため開発が進んでしまっていることや、ゴミ問題やトイレの汚水問題などが存在していたために登録が見送られた。しかし、古来よりの富士山信仰があることや浮世絵など多くの芸術対象になっていることから文化遺産として、2007年6月に暫定リストに加えられている。その陰には静岡県や山梨県などの関係者による不断の環境保護・保全活動などがある。今年9月にはイコモス(国際記念物遺跡会議の委員)の現地調査が終了しており、現在、来年6月のユネスコ世界遺産委員会における登録の最終判断を待っている状況である。

昔から、外国人が日本について思い浮かべる言葉として「フジヤマ、ゲイシャ」と言われているように、富士山は日本の代名詞である。今回、世界遺産に登録されても、広域な範囲の環境管理活動や山麓の不法投棄や演習場問題など多くの課題も残っているようであるが、富士山の美しい姿の保全のためにも、世界遺産への「まずは登録」を是非とも応援したい。そして、マナーの悪さに富士山が大噴火しないことを祈りたい。

武井 勇二
調査本部
主任研究員


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