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2013/03

公営企業会計制度変更からの大爆発はおこるのか

初めて簿記を勉強した日を覚えているだろうか。簿記テキストのはじめのページには「簿記とは何か」といった記載があり、それに続いて「簿記には単式簿記と複式簿記があるが、単式簿記はおこづかい帳のようなものであり、これから学ぶいわゆる“簿記”は全て複式簿記です」といったような説明がなかっただろうか。簿記を初めて学ぶ機会にあった当時のわたしは、ふーん、とさえも思わず、ページをめくったと思う。その後、簿記検定を受けたり、また、社会人になり民間企業の決算書を読むことの多い仕事に就いたりと、“簿記”や“会計”とはそこそこ近くに生きてきたように感じている。

しかしここにきて出会った公会計=官庁会計は、あのテキスト1ページ目に1行で済まされていた単式簿記で、さらに発生主義ではなく現金主義で成り立っているというのだ。国家の決算書はおこづかい帳だったのか、と衝撃を受けたが、予算の使われ方を明確に表示するためには現金収支を把握する意味で分かりやすいシステムともいえる。一方でマネジメント視点での情報が不足しているため、現在は複数の自治体で、複式簿記、発生主義の会計によるいわゆる民間企業の決算書に近いものを出しているのがここ最近の流れだ。

自治体のインフラ事業に関わっていると、公会計の中でも公営企業会計というものと接することが多い。国や地方自治体の行う水道事業やガス事業などに適用(地方公営企業法)されているもので、当然、複式簿記、発生主義であり、企業会計に近いつくりになっている。しかしやはり「公営企業」でもあり、完全に民間企業のBS、PLと同じというわけではない、どころかかなりの相違があるので読み解くのに時間がかかる。様々な相違のなかでもとりわけ驚いたのは「借入資本金の資本計上」。建設改良財源に充てるための借入金等は負債ではなく資本金の一部として計上されるというものだ。他にもBS、PL上の様々な相違があり、インフラ事業でのPPP、官民連携において事業の実態を捉えづらくなることがしばしばある。

上で述べた「借入資本金の資本計上」を含め、現在総務省では地方公営企業会計制度の見直しが行われている。昭和41年以来の改正で資本制度の見直しは平成24年度から適用、会計基準については平成26年度から適用される(平成24年度からの早期適用も可能)。それにより、先ほどの借入資本金は民間企業の決算書で見慣れているように負債に計上されることとなる。今後は民間企業との比較分析やシミュレーションも行いやすくなるが、自治体としては民間企業と同じ土俵、つまり借入資本金の話でいえば、一気に資本から負債計上されての数値比較、分析だ。民間企業としては「自治体の事業はやはり非効率だ、民間企業ではやらない」とするのか、それとも「少し筋トレをすればもっとよい事業になる、ビジネスチャンスだ」とするのか。安心・安全のインフラを守ってきた自治体の職人たちと、様々な分野でイノベーションを興してきた民間企業人との出会いによる大爆発はおこるのだろうか。


(参考)
総務省(地方公営企業等>会計制度の見直し)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouei_minaoshi.html
Grant Thonton Monthly Report vol.43 地方公営会計基準の見直しについて
http://www.gtjapan.or.jp/monthly_report/2012-08-vol-43.html

田巻 潤子
インフラ本部 兼 ソリューション本部 環境・防災部
研究員


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