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2013/05

図書館に行こう

通勤電車での楽しみといえば読書。デジタル端末にストックしたコンテンツも便利だが、紙のページを繰ることは読書の魅力のひとつではないか。車内を見渡すと、図書館のラベルが貼られた本を手にする人が増えたように感じる。実際、国民1人あたりへの貸出し冊数は平成元年度の2.2冊から、平成23年度には過去最高の5.4冊と倍増している*1。文部科学省はこれを図書館のサービス向上、余暇を図書館で過ごす年配者の増加によるものとみるが*2、とりわけ近年のサービス向上とその多様化には目をみはるものがある。

例えば、資料へのアクセスが容易になった。書籍タイトルを知らずとも、ネット環境さえあればキーワード検索を使って貸出し予約ができる。ほとんどの自治体が都道府県単位の横断検索システムを保有し、同一都道府県内にある図書館からの相互貸借が可能な現在、大抵の本は最寄りの公立図書館で手に入る。通常、資料の貸出しには当該自治体への居住や在勤・在学が条件となるものの、例えば都内の10以上の自治体では、このような条件を設けず誰でも利用登録することが可能だ。

開館時間も長くなった。いまや全国の公立図書館3,221館のうち、7割が18時以降も開館し、22時台まで利用可能な図書館は20館ある*3。所沢市等では、コンビニエンスストアでの取次サービスを実施しており、貸し出し・返却は実質24時間体制だ。有料での資料宅配サービスを導入する自治体も出ている。

さらに、個性的なサービスが各地で展開されつつある。千代田区立千代田図書館には、従来のレファレンス業務に留まらず、図書の購入や区内の古書店・飲食店の案内まで手掛けるコンシェルジュが常駐している。改修を経た佐賀県の武雄市図書館は9時から21時の年中無休体制となり、シアトル系コーヒーショップ、書店、有料の音楽・映像ソフトレンタル店を併設する他、館内で無償貸与されるタブレット型端末を含め、所定OSが搭載されたデジタル端末で特定図書の閲覧ができるとしている。両館は何れも指定管理事業者によって運営されている。

指定管理者制度のねらいのひとつとして、民間の創意工夫により、自治体の財政負担軽減やサービス向上を図ることが挙げられる。ただし図書館への制度適用の是非については諸説ある。日本図書館協会は、図書館が事業収益の見込みにくいサービスであることに加え、長期的視野に立った資料収集や司書の専門性蓄積等の観点から、公共による直営のメリットを指摘する*4 *5。事実、指定管理者制度を導入した後、直営に戻すケースも散見される。

指定管理者制度をめぐるこうした議論の活発化は、ひとまず歓迎すべきものだろう。 歴史的に、民衆が無料で図書館を利用できるようになったのはごく最近のこと ― グーテンベルクの印刷革命以降である。古代より長らく図書館は、貴族や学者だけが利用するもの、あるいは有料で利用するものであった。中世においてすら、本はなお高価な貴重品であり、書棚に鎖でつながれていたという*6。長い歴史の末端に私たちを位置づけてみれば、改めて今日の図書館サービスのありがたさが実感されるというものだ。

あなたの身近にある図書館ではどのようなサービスが展開されているだろうか。


*1 文部科学省「平成23年度 社会教育調査(中間報告)」
*2 日本経済新聞「図書館の貸出数最多の5.4冊」2012年11月1日web刊
*3 文部科学省「平成23年度 社会教育調査」
*4 日本図書館協会「日本図書館協会の見解・意見・要望」2010年3月1日,日本図書館協会オフィシャル
  サイト
*5 日本図書館協会は、当時構想段階にあった現武雄市図書館について、指定管理者制度の導入手続きや
  物販および商用ポイント制度の導入等について懸念を示している。
 (日本図書館協会「武雄市の新・図書館構想について」2012年5月28日,日本図書館協会オフィシャルサイト)
*6 wikipedia「図書館の歴史」


横山直子
社会インフラ本部
副主任研究員


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