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2014/05

ノルウェー雑感

先日、ちょうど日本の消費税が5%から8%に変わるころノルウェーに10日ほど出張する機会があった。出張目的の報告は別稿に譲るとして、今回はノルウェーのひと、都市についての雑感を述べてみたい。もとより一出張者の短期間の見聞きに基づくもので、ノルウェーの断面のほんの一部にすぎないことはご了承頂きたい。

ノルウェーについての事前知識としては、福祉国家で社会保障が充実、女性の社会進出が活発、石油・ガスなどのエネルギー資源、水産品の輸出大国、社会保障充実の裏腹で消費税(付加価値税)が高く(物品によるが基本的に25%)、物価も高い、という程度の断片的なものであった。

今回の訪問では首都オスロだけでなく、北極圏のトロムソから南下しトロンハイム、スタバンゲルという北海沿岸都市を回った。オスロは人口62万人(ノルウェー中央統計局2013)で、日本の県庁所在地でいえば熊本市より小さく鹿児島市より若干大きい程度(2010年国勢調査)である。また、その他の都市は精々数万人から十数万人の都市規模で、ノルウェーでは大都市だが日本なら中小都市並みだ。しかしながら、住居、商業施設、自動車、公共インフラ等を見て、また関係者にヒアリングする限り、オスロのみならず地方都市でも人々の生活は豊かだ。

まず、オスロでは都市と調和のとれた公共交通機関が発達している。人口62万人にして地下鉄が6系統運行し、トラムは網の目のように市街地を走っている(写真参照)。筆者はいずれも乗車してみたが、朝昼夕に関わらず、頻繁に発着しており極めて便利だ。日本流に見れば、特に地下鉄は全ての路線で採算が取れているようにはとても見えないが、公共インフラと考えればそれでもよいのだろう。日本の類似規模の都市との差を感じずにいられない。

地方都市では、余裕ある住環境に加え、日本では高級車とされる欧州製の最新型車が多数走っていた。ヒアリングによれば、排気量や二酸化炭素排出量等によって異なるものの取得時の税負担が付加価値税(25%)と併せ車体価格と同額になることもあるそうだが、それだけの購買力があるということだ。また、電気自動車(日産リーフやテスラなど)も多数走っており、街中に多くの充電スタンドがあった(写真参照)。税制面や道路利用等に関わる優遇策が充実しているからだそうだが、電力の水力発電依存が100%に近いノルウェーでは合理的な施策なのだろう。

ビジネスアワーは概ね朝8時から午後4時で、残業が当たり前という雰囲気はない。筆者達もある会議で、会議開始前に、「今日は4時までで終わります。その後、子どもを迎えにいかなくてはならないからね。」と先方にくぎを刺された。いつもそのようなスタイルなのか、(残業が多いといわれる)日本人が相手だからか判らないが徹底している(もちろん十分な会議時間を取ってくれたことは付け加えておく)。

そうした環境下で、なぜ豊かな生活を享受できるのか。個々の産業別の分析をしない限り簡単に結論付けることは出来ないが、今回の出張で一つ判ったことは、中央に依存する必要がない産業を地域が保有し育てていること、効率性・合理性の追求とそれによる無駄の排除が徹底しており、それが地域発の国際競争力確保の一要因になっていることだ。

ノルウェーや北欧社会と日本との比較論はあるが、極端な賛美や、異質論(事情が異なりすぎて日本には導入できない)になりがちだ。どちらも間違いではないが、ことノルウェー産業については、これをよく学び、日本にそのまま導入出来ること、調整すれば導入できることは積極的に取り込む貪欲さは必要だと感じている。物価の高さだけは勘弁願いたいが。



(オスロ市内を網の目のように走るトラム)

(トロンハイム市内の電気自動車と充電スタンド)


洞 靖英
地域本部
地域振興部部長


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