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2014/11

太平洋の真ん中で

本コラムは、現在出張している南太平洋地域で書いている。地図上ではほとんど陸地の見えない地域であるが、この地域には、太平洋諸島フォーラム(PIF)に加盟する14ヵ国の他に、私たち日本人によく知られた仏領のタヒチやニューカレドニア、その他にも米領や英領など、数多くの島々が点在している。太平洋島嶼地域といってもその海域は広く、パラオやグアムなどのあるミクロネシア地域、パプアニューギニアやフィジーのあるメラネシア地域、そしてサモアやトンガのあるポリネシア地域に大別されるが、国家規模もそれぞれの国が抱える条件も多種多様であり、必ずしも私たちが抱く「楽園」のイメージは当てはまらないところがとても多い。

太平洋の島嶼国・地域の多くは、脆弱性、隔絶性、狭小性、拡散性などの言葉に代表される困難性に直面しており、海面上昇の影響が懸念される島々も少なくない。これらの国では、歴史的な経緯もあり、旧宗主国や信託統治国への移動の自由が保障されていたり、世界中の途上国で最も高い水準となる1人当たり援助額を受け取っていたりする。特にポリネシアの島嶼国は、特徴のある対外的な経済関係がMIRAB経済(移住、送金、援助、官僚制度に依存した経済構造)という言葉でも表わされてきた(近年は外国人観光客をターゲットとした観光開発も多くの国で推進されている)。

日本は多くの島嶼国にとって最も援助額の多い国のひとつであり、その分野も多岐にわたる。私はそのような援助プロジェクトが本当に当初の想定通りの効果を挙げ、その国の社会経済の発展につながっているかどうかを調査する仕事によく携わっているが、太平洋の島嶼国に対する支援は比較的大きなインパクトを与える傾向があると感じている。ただ、例えば人材育成の支援などの場合、能力が高まった人がその後域外の他国へ移住するという現象も珍しくなく、援助側からはそのような流れは望ましくないと捉えられることが多い。しかし、島嶼社会にとっては、移住者からの本国の家族・親族への送金という形で、島嶼国内では生み出せない付加価値がもたらされ、結果的に経済成長につながっていると考えられる向きもある。

私自身、高校生の時にニュージーランドに1年間滞在した際、クック諸島出身の家庭にお世話になったことがきっかけでこの地域に人一倍の関心を抱くようになった。島嶼地域は、地政学的には重要である一方で、市場としての魅力があまりないことから、経済のグローバル化の流れからは忘れられた存在になりうる地域である。そのような地域で援助事業はどのような視点で実施されるべきか、援助を超えてどのような域内外の国々の関係がありうるかなど、個人としてできることはとても小さいが、この地域の人々と関わり始めて20数年、これからも考えていきたいと思う。また、日本にとっては歴史的にも漁業資源の面でも大きな関係があるほか、太平洋を共有しているという点からも、この地域との関わりを「隣国」という見方で捉える日本人が1人でも増えることを願っている。


西川 圭輔
国際本部
主任研究員


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