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2015/04

農地について

数年前と比較して最近は、農業振興策関連のニュースが報道される機会が増加したように感じられる。報道では「六次産業化」「輸出」等、農業における最終的なアウトプットとして「農産物」に関する話題に焦点があてられることが多いが、本文では、それら農産物の源泉である「農地1」に焦点を当てたい。

さて、「日本の農業が衰退している」という事実は広く周知されていると思う。しかしその漠然とした事実に対する本質的な事象は、なかなか捉えにくいのではないだろうか。その事象の一つとしては「優良な農地が減少し、高品質な農産物を生産するための基盤が危うくなりつつあること」が考えられる。ここで述べる優良な農地とは、栄養価が高く日持ちする高品質な農産物を生産するに適した農地とする。高品質な農産物を生産するには必ず土づくりを入念に行い、生産基盤である農地を優良な状態にしておかなければならない。筆者が今までに出会った篤農家は必ずそう語っていた。

我が国の農地は、ピーク時の608万6,000ha(1961年)から454万9,000ha(2012年)2へと減少傾向にある。農地が減少した要因としては宅地や商工業用地等、農地以外の土地への転用や耕作放棄等が挙げられる。
高度経済成長期以降、都市部に位置する農地の多くは住宅地や工業用地に転用された。
一方農村部においては、市場経済性を最優先した近代農業が展開され、耕地面積当たりの収穫量を可能な限り引き上げてきた。一定期間農地を酷使した結果、農地の生産機能が低下し、耕作放棄に至ったケースは多いのではないだろうか。

一度荒廃した農地の機能を再び取り戻すことは容易でなく、整備や土づくりには十年以上の長い期間を要する。従って農地とは、宅地や工業用地とは異なり、十分な機能を果たすためには長期的かつ計画的な管理を必要とする土地であるといえる。しかも、農地の性質は各地の気象条件等によって様々であり、管理方法は一元的に設定できるものではない。

従って、現存する農地を我が国の貴重な資源と捉えた上で適切な維持・管理を行い、確実に次世代の農業経営者に引き継いでいくという事は、この先日本の農業振興策を講じる上で重要なプロセスの一つであると言えるのではないだろうか。
具体的には、農地の利用状況を一度明確にした状態で、優良な農地には格付け等の適正な評価を行い、それらの維持管理及び活用施策について長期的な視点で講じる必要があると考えられる。
昨今政府は地方分権改革の一環として、農地転用の許可権限を都道府県や市町村に大幅に委譲することを決定した。今後、優良農地の存亡および農業の盛衰は各地域の方針にゆだねられている。

1「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいう。(農地法第2条第1項より)統計上は「耕地」と表現され、農作物の栽培を目的とする土地と定義される(けい畔を含む)。

2農林水産省「耕地及び作付面積統計」より


中山 朋恵
地域本部 地域振興部
研究員


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