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2015/06

地方不動産の光と影

先日来の報道で、バブル崩壊の象徴とされた2大資産について、久々に明るいニュースが報じられた。

一つ目は株式であり、5/20の東証1部の株式時価総額がバブル期の1989年末(終値ベースで590兆9087億円)を超えて過去最高水準になったと報じられた(もっとも、これは東証一部上場の企業数が約6割も増えたことが大きく起因しているとされている。)。二つ目は不動産であり、国土交通省が3/18日に発表した公示地価(2015年1月1日時点)によると、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の地価は、住宅地、商業地とも2年連続で上昇したと報じられた。また、その他の地方でも、地価は全国的に下げ止まりを見せている。ともに、日本銀行が行った異次元金融緩和の影響が大きいため、手放しで受け止めることにはならないが、今の時代の一つの節目を示すニュースとして特色ある内容となっている。とはいえ、バブル期以降の「失われた20年」を経て、資産としての性格が株式と不動産とで大きく変わってきたのではないだろうか。

ここ3年間ほど、地方都市における老朽・低未利用不動産の利活用による地域経済活性化のための取り組みを行っている。こうした中で、特に感じるのは、資産としての不動産の特性の変化だ。これには、光と影の2つの側面があると感じている。

まず、光としての側面は、不動産投資を行う際の新たなファイナンス手法が整備されたことである。バブル期以前と比較すると、不動産証券化手法の活用に関する法制度が整備された結果、個人投資家でも不動産投資を行いやすい環境整備が図られた点であり、その代表例がREIT(不動産投資信託)である。こうした環境整備の結果、良質な不動産に対しては、様々な投資資金が流入され、昨年度は、ヘルスケアリートが2件上場され上場リート数は51件に達する等、お金の好循環が形成されてきている。

一方、影としての側面は、地方における空き地、空き家問題、シャッター通り商店街の問題が深刻化している点である。これを象徴する内容が、明日5/26に全面施行されることとなる「空家等対策の推進に関する特別措置法」である。これは、「適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空家等の活用のため対応が必要(同法1条)」を背景としたものである。

こうした光と影に共通するのは、資産としての不動産の特性の変化である。バブル崩壊までは、不動産は必ず価値が上がるといった「土地神話」が存在し、また交換価値が見込める資産であった。ところが、現在の不動産の価値は、利益を生み出すことによって初めて価値を生み出すものへと変わってきたという背景がある。しかし、大都市圏のように、人口やオフィスが集中して需要が旺盛な資産であれば、収益不動産として高い価値を見込むことは可能であるものの、地方都市圏では収益不動産として成立するものは一部の限られた資産にとどまるのではないかとの懸念もある。現に、不動産証券化が形成される資産の大半が首都圏を中心とする大都市圏に集中している。このため、ポテンシャルがありながら投資資金とのマッチングが進まない地方都市の不動産の利活用促進を進めている。

こうした取り組みを行ううえで、参考にすべきと考えている対応策として3つの先進的な取り組みに注目している。一つ目は、北九州市を発祥として今や社会現象ともなりつつある「リノベーションまちづくり」であり、二つ目は、ヘルスケア施設(サービス付老人介護住宅など)やPRE(公的不動産)など、地方における確実な需要に着目した不動産を整備する方法である(米子市)。また、三つ目としては、事例数は数少ないものの、地域の需要を見極めて地域活性化事業を行った事例がある(高松丸亀長商店街G街区第一種市街地再開発事業、岩手県紫波町オガールプロジェクト)。


石崎 篤史
ソリューション本部
上席研究主幹


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