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2015/10

壊すのは簡単?

東京駅周辺、丸の内や大手町には、数えきれないほどの高層ビルが立ち並んでいる。ここ数年の間に建て替えられたものが多く目につくのだが、なお現在も複数の高層ビルが建設中で、もう作らなくても十分なのではという気もする。さらに、新たな再開発事業によって大手町には日本一高いビルの建設が計画されており、その南側の八重洲でも大規模な再開発事業が進められているという。また、東京駅周辺だけでなく、渋谷、品川、虎ノ門など、国家戦略特区の後押しもあり、東京都内では大規模な再開発事業が目白押しとなっている。

今ある形より高度に利用され、地域の活性化に貢献するのであれば、壊される建物も本望かもしれない。だが、「古くなったから建て替えましょう」という単純な割り切りだけではうまくいかないこともあるだろう。何十年もその地域にあり続けていた建物は、街並みを構成する重要な一部分となっており、地域の方や利用者にも愛着がわいているだろう。また、デザインが秀逸であれば建築物というよりも芸術作品としての位置づけで保存を求められることもある。今年8月には、虎ノ門にあるホテルオークラが建て替えのため、本館の営業を終了した。建物は取り壊されることが決定しているが、近代建築としての評価が高く、壊してしまうことに対し、惜しむ声があがっているという。ホテルオークラ東京本館は50年を超えて利用されたが、著名な建築家である丹下健三氏の設計による赤坂プリンスホテルの新館はわずか30年程度でその役割を終え、解体されている。丸の内にあるJPタワーは重要文化財級の価値があるとされていた旧東京中央郵便局庁舎の保存のため、再開発計画の見直しを巡って問題となった経緯がある。建物所有者の事業上の問題や、老朽化や耐震等の物理的な問題もあろうが、建物の持つ歴史的・芸術的な価値をどのようにして守っていくか、難しいところではある。

建て替えで問題になったといえば、国立競技場である。老朽化が進み、ラグビーW杯や2020年東京オリンピックへの対応のため建て替えが決定し、解体された。結局、建設費の高騰が原因であの斬新なデザインが実現されることはなくなったが、更地になってしまった日本のスポーツの聖地のひとつは、今後どのような形に生まれ変わるのだろうか。

余談だが大阪万博のシンボルで芸術家・岡本太郎氏の作品である「太陽の塔」は耐震改修工事が必要だそうだ。技術的に難しいのか、入札を行ったものの、予定価格超過で入札不調が続いているという。建築物というよりも芸術作品そのものという位置づけかもしれないが、あまりに独特な形状は、保存するのにも一苦労するようだ。


田中 洋平
調査本部
主任研究員


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