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2017/08

ヒマラヤの国より

昨秋以降、ODAの業務でネパールを何度か訪問する機会がありました。渡航前はネパールにあまり馴染みがなく、真っ先に思い浮かんだのは、世界で唯一四角でない特徴的な国旗と、エベレストという漠然としたイメージでした。多くの日本人にとって、南アジアといえばインドの印象が強く、ネパールの印象は薄いのかもしれません。

一方で、近年はネパールからの留学生、技能実習生、そしてインド料理屋の料理人など多くのネパール人が日本に住んでおり、在日ネパール人は67,420人と、南アジア諸国の中で最上位の6位(法務省在留外国人統計、2016年12月時点)に位置し、実はとても身近な存在でもあります。ネパール人の主食であるダルバート(豆のスープとご飯)はちょうど日本のお味噌汁とご飯に相当し、親近感を覚えました。

ネパールは北海道の1.8倍ほどの広さの国土(14.7万平方km)に、東京都の人口の約1.9倍の2,649万人(2011年国勢調査)が暮らしています。人口の6割以上が30歳未満であり、豊富な若い労働力を有しています。また、亜熱帯から世界最高峰のエベレストまで非常に変化に富んだ地形・植生を有し、観光産業という観点からは他にはないユニークな魅力を持つ国でもあります。

一方で、北は中国、東西南はインドに挟まれた内陸開発途上国(LLDC)という地勢的に開発に不利な途上国で、北はヒマラヤ山脈に阻まれ、海に出るまでには必ずインドを通過することになる等、製造業の拠点・貿易の拠点としては不利な地に位置しています。加えて、隣国のインドやバングラデシュのような人口規模もないことから、販売市場としての魅力が低いために進出企業が少なく、世界の経済成長から遅れがちな地域となっています。

上記の理由等から、農業や観光産業以外の雇用が限定的であり、従業員10人以上の登記済みの製造業事業所は4,076事業所にとどまっています (2011-2012 製造業センサス、ネパール中央統計局)。そのため、高等教育を受けた人の海外移住等、貴重な人材の流出が問題になっています。また、中東・東南アジア等に毎年多くの出稼ぎ労働者を送り出しており、通勤途中にパスポートセンターの前を通った時にも早朝から多くの若者が行列し、窓口が開く前から待っていました。なお、ネパールは人口の約3分の2が農業に従事していますが、GDPに占める割合は4割以下と低く、一方で出稼ぎ労働者からの海外送金がGDPの28%を占めています (2013年-2014年、ネパール労働省)。

2018年にネパール中央統計局が初めて実施する予定の経済センサスでは、登記の有無に関わらず、対象となる全業種の事業所の現状を調査し、今後の経済・雇用等の様々な政策の立案に活用されることが期待されています。

現在、ネパール中央統計局からカウンターパートが東京に研修に来ていますが、週末にしたいことを彼らに聞いてみると、富士山に行ってみたいので、行き方を教えて欲しいとのこと。富士山は世界最高峰のヒマラヤの山々を見慣れているはずの彼らをも魅了しているようです。



原田 絵美
国際本部
副主任研究員


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