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2018/4

週末は美術館へ

私は、週末に美術館に行くことが多いのだが、美術館を含む博物館は、全国にとにかくたくさんある。
日本国内の博物館は、約4,200〜5,700も存在するといわれる。「社会教育調査(2015年度)」によると、館種別内訳では歴史博物館が最も多い3,302館、次いで美術博物館(以下、美術館)が1,064館である [1]

【博物館はどこにどれだけあるのか】

立地都道府県別では、長野県が362館と最も多く、次いで東京都が300館となっている。
設置者別では、博物館全体では国や市町村による国公立館が多数(約78.9%)を占めるが、美術館は特徴的で比較的国公立館が少ない(国公立館:約55.2%)。私立館は、美術品蒐集家の蒐集作品を公に公開するものや、作家別の美術館等がある。
人口の多い東京都に博物館が多いのは想像がつくとして、長野県は意外だ。おそらく、純粋な作品蒐集や研究というよりは、避暑地に適する気候を生かした観光戦略の一環として設置が進んだのではないかと考えられる。一方で、日本博物館協会による調査結果[2]をもとに国公立/私立の別でみると、長野県下では私立68館に対して公立159館と公主導のものがかなり多いことから、教育振興策としての設立経緯も考えられる。観光+教育の双方のメリットを生む施設として推進されたのではないだろうか。

(単位:館)
登録館/相当館 類似施設 合計
(国公立・私立の別)
国公立 私立
博物館 1,256 4,434 4,489 1,201 5,690
 うち歴史博物館 451 2,851 2,836 466 3,302
 うち美術館博物館 441 623 587 477 1,064
以下、都道府県別上位
①長野県 85 277 - - 362
 うち歴史博物館 28 155 - - 183
 うち美術館博物館 38 72 - - 110
②東京都 95 205 - - 300
 うち歴史博物館 35 91 - - 126
 うち美術館博物館 37 51 - - 88

*文部科学省「社会教育調査(2015年度)」より

【どんな機能を担う施設なのか】

博物館は、資料収集、保管、展示、調査研究が基本的な機能となる 。[3]
資料管理にコストがかかること、比較的利用者が限られることから、悪い意味でのハコモノの代名詞とされることもあり、今後は一層地域社会との関係づくりや地域に果たす役割を表に出していくことが必要になるだろう。
日本でかなり初期から地域向けワークショップを実施してきた世田谷区美術館(1986年開館)の学芸員の回想をみてみる。学芸員の高橋直裕は、美術館開館当初に同期職員の福祉作業所職員が「福祉作業所では、年間5万円の予算がなかなか付かないのに、なんで同じ世田谷区なのに美術館だけ何十億という予算が付くんだろうな」と話した言葉を聞き、美術館の役割を考えさせられたという[4]。30年前の現場でも社会的役割についての問題意識があったことがわかる。その後、「美術館もひとつの福祉である」との考えのもと、ワークショップという活動を模索していくことになる。
博物館では、基本機能の展示に加え、上記のワークショップのような事業や来館者の理解を助ける様々な工夫が凝らされている。実際に参加してみた経験を踏まえて紹介したい。

【展示解説と教育普及活動とは】

展示品は、それだけではなかなか理解されにくい。そこで展示を補助・解説する機能として、いくつかの方法がある。また、ここ数年で、写真撮影が許可された館も大幅に増え、楽しみ方の幅が広がったように思う。

展示解説
文字解説 作品とともに壁面等に加えられるキャプション。各展示品の作品名、作者、制作年、画材などを記載。作品や作者の解説が加えられることもある。
機器解説 美術館ではポータブル式のオーディオ・ガイドが主流。近年は、芸能人の声によるものが増えた。30分程度の音声で解説してくれる。
例:「至上の印象派」展(国立新美術館)では64作品中19作品を解説
口頭解説 北米の博物館で活発に取入れが進んだ。学芸員やボランティアが館内を回りながら作品のポイントや時代背景などについて解説。各回の参加者に応じた対応があり、「どのように感じますか」などの問いかけが入るのが特徴。主要な作品について30分〜1時間で解説。
例:「ブルーノ・ムナーリ」展(神奈川県立近代美術館葉山館)では30分で学芸員とともに展示室を一周。国立西洋美術館では、常設展示室の解説で50分と長い(ボランティアガイドが解説)。
映像解説 エントランスや休憩スペースで5~30分程度の映像番組を流すもの。展示室を回って疲れ、一休みついでに見る人も多い。

また、展示解説のほかに教育普及活動として、講演会などを開催することがある。美術館では、座学講座は55.4%の美術館で実施されており、実習型講演会・実技教室も59.7%と過半数の施設で実施されている[5]

講演・講座等
講演会 通常、テーマを絞った一回限りの講演会。テーマによるが展示品に限らず、作家の代表作や関連作家の作品も含め、しっかりと理論だった解説を聞くことができる。講演者の熱が入り、時間通りに終わらないことも。
例:「プラド美術館展」(国立西洋美術館)では、約3ヶ月の期間中に独立したテーマで5回(各90分)の講演会が企画されている。
講座・教室 講演会と異なり、半年や通年プログラムとして少人数対象に行うもの。専門的で比較的高度なものが多い。あるテーマについて体系的に学べる。
ワークショップ 元来は工場、仕事場の意。講師を招いて、参加者が手を動かして作品作りを行うものなど。子ども向け・親子向けのプログラムも多い。
目黒区美術館、世田谷区美術館の実施内容が有名。
出版 館のガイドブック、特別展の図録、博物館ニュース、紀要。

【展示の楽しみ方】

美術館は、あるコンセプトに基づいて作品を選び、購入し、それらがコレクションと呼ばれる。実業家で美術品蒐集家のエミール・ゲオルク・ビュールレは、コレクターは「独自の意思をもって作品を選び、個性的な組み合わせによって、あるまとまりを作り上げること」が必要と述べている。この言葉は、個々の作品とそのコレクションの違い、コレクターの編集に近い効果を表現していておもしろい。
展示品は、蒐集家や学芸員の思いが表現される場である。個々の目玉作品を見に行くのも良いが、コレクション全体のストーリーやまとまりとしてはじめて見えてくる意図を楽しみに、週末は美術館に足を運んでみてはどうだろうか。
もちろんその際は各種講演会等を利用することをお勧めしたい。



参考文献:加藤有次他『生涯学習と博物館活動』、雄山閣出版、1999年。



[1]文部科学省「社会教育調査(2015年度)」では5,690館、日本博物館協会「博物館研究 Vol.53 No.4」(2018年)では4,183館。

[2]日本博物館協会「博物館研究 Vol.53 No.4」、2018年。独自調査のため、合計値は「社会教育調査」とは異なる。

[3]「『博物館』とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関」(博物館法 第2条)

[4]東京パブリッシングハウス、目黒区美術館編「美術館ワークショップの再認識と再考察―草創期を振り返る」、富士ゼロックス、2009年。

[5]日本博物館協会「平成25年度 日本の博物館総合調査報告書」、日本博物館協会、平成29年3月。


霜中良昭
社会インフラ本部
公共マネジメント部
副主任研究員


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