Report

令和6年度老人保健健康増進等事業 介護ロボット等を安全に利用するための認証制度等に関する調査研究事業

このたび株式会社日本経済研究所は、令和6年度老人保健健康増進等事業の国庫補助を受けて下記の事業を実施しました。調査にご協力くださった有識者の先生方、民間団体、地方自治体等の方々に感謝を申し上げるとともに、ここに報告書を掲載します。

令和6年度老人保健健康増進等事業
介護ロボット等を安全に利用するための認証制度等に関する調査研究事業

  1. 事業目的
     介護現場では生産性向上のため、介護テクノロジーの活用が重要となっている。しかし現実には、介護サービス事業所等の課題やケアに適した機器選択がされていない可能性、有効活用されていない可能性、開発時に想定外の使われ方をしている可能性などが考えられる。また、安全や性能等に対する不安感から介護テクノロジーの導入自体が阻害されている可能性もある。本調査研究事業では、介護事業所が機器を適切に選択し安全に利用することが可能となるよう、介護事業所等が機器の導入をする際の判断等に必要な情報を精査し、当該情報の収集と内容についての理解が促進されるための介護テクノロジーにかかる認証等のあり方について調査研究を行った。

  2. 事業概要
     3種類の調査と検討会の設置・開催を行った。まず、介護事業所約3,000か所に対し、Webアンケートにより、介護テクノロジーを導入又は導入を検討する目的や基準、介護現場ではどのような安全性や性能を求めるかを調査した。また、求める安全性や性能を満たすかを判断する基準として、認証マークへの認識と有用性を調査した。つづいて、介護テクノロジー等に関して一定の安全性や性能の基準等を評価する団体2か所に対し、審査の過程や申請状況、審査や認証マークの普及における課題についてヒアリング調査を行った。さらに、介護テクノロジー製品の開発事業者6社に対し、認証マークを取得する狙いや目的のほか、安全性や性能の保証を示す認証マークに関する課題や所感をたずねた。
     これらの調査の企画や結果の分析と報告書の作成に際しては、有識者6名からなる検討会を設置し、3回の会議の中で助言をいただきながら実施した。

  3. 事業実施結果及び効果
    〇調査では、介護テクノロジー開発事業者間に安全性(又は許容できないリスク)に関する共通認識がない状況を浮き彫りにするとともに、開発事業者側が考える安全な製品と、使用側の介護事業所の職員が考える安全な製品像に乖離があることを明らかにした。さらに、その乖離に関連することとして、使用側からすると製品が安全であることは当然という感覚であり、価格と比較すると安全性は介護テクノロジーの導入を左右する要素になりづらいことも調査からわかった。これらのことから、たとえ安全を担保する認証等が存在しても、安全のみの評価軸で評価するのでは開発事業者の販売上の優位にはならず、コストと労力を認証取得にかけるインセンティブが働かないという課題を抽出するに至った。

    ○介護テクノロジー製品が非常に多岐にわたり用途もさまざまであることや、自己宣言から国による審査まで幅広い認証の程度の考え方があること、また現状の課題を鑑みると、評価軸等の具体的な認証制度の内容の前に、まずは検討すべき内容の整理が必要であり、段階的な議論をしていくことが重要であるとした。段階的な議論に関しては、当面の目標として自主的ガイドラインの作成を推奨するとともに、作成までのロードマップも提案し、今後の本分野調査の道筋を示した。

本件に関するお問い合わせ

公共デザイン本部 医療・福祉チーム

TEL:03-6214-4612