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2018/11

先天性風疹症候群(CRS)について

2018年は風疹が大流行している。国立感染症研究所の報告によると、2018年10月10日時点で風疹患者累計報告数は1,103人となり、2017年の約12倍の報告数となっている。なぜ私が風疹の流行について、関心があるのかというと、パートナーが助産師をしているからである。

妊婦の感染症で注意すべきものには、風疹、サイトメガロウィルス感染症、トキソプラズマ症などがあるが、いずれの感染症も妊娠中に感染すると胎児に障害が生じる恐れがある。風疹は、妊娠初期(20週以前)に感染すると、胎児に感染し、赤ちゃんが難聴・白内障・先天性心疾患を特徴とする先天性風疹症候群(CRS)を持って生まれてくる可能性が高くなる。ただ幸いなことに、風疹は予防接種を受けることにより感染を防ぐことが可能な感染症である。

今回の風疹の流行は、感染者の多くが30代~50代の男性であり、風疹の予防接種歴が「不明」又は「接種なし」という感染者が9割を占めている(図表1)。実はこの30代~50代の男性は、予防接種の対象外あるいは1回予防接種を受けている世代である。

図表1:風疹累積報告数(男性)年齢別-予防接種歴別

出典:国立感染症研究所ホームページ

定期予防接種制度の変遷により、世代・性別ごとで風疹の予防接種回数は異なり、風疹感染リスクも年齢ごとに異なりがある(図表2)。また、現在では先天性風疹症候群(CRS)の予防を目的に男女とも2回の接種が原則となっている。下記に世代別の風疹予防接種歴をまとめた。

図表2:世代ごとの風疹予防接種歴

気になる風疹ワクチンの効果については1回接種で約95%、2回接種で約99%である。私自身1回接種の世代で、抗体をもっていない人の割合が多い世代でもあるが、2度目の接種を行った。ただ、年齢を重ねることで抗体価が低くなることもあるため、身近に妊娠を希望する女性がいる場合で自身の抗体保有に不安がある方は是非抗体検査を受けて頂きたい。母子手帳などで明らかに風疹の予防接種歴が確認できる方以外は、現在多くの自治体で風疹抗体検査の無料実施や風疹含有ワクチン接種の一部補助などを行っている。

厚生労働省でも先天性風疹症候群(CRS)対策のため、ポスターやリーフレットなどで呼びかけを行っているが、重要なことは妊娠を希望する女性の身近な人々であるパートナー男性、同居の家族、職場の同僚などが感染予防をすることである。今回の風疹大流行の要因としては、図表1からわかるように予防接種歴が「不明」又は「接種なし」の風疹予防へ無関心な方が多いことが考えられる。 まずは風疹抗体の有無や予防接種歴には関心を持ち、未来の赤ちゃんや妊婦を周囲の人が守っていくような環境になってほしい。

「子は宝」という言葉があるが、一人でも多くの赤ちゃんが今日も元気に生まれてきてくれることを願っている。


前田聡紀
調査本部 医療福祉部
副主任研究員


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