このたび株式会社日本経済研究所は、平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業の国庫補助を受けて下記の事業を実施しました。本事業にご協力くださった有識者ならびに都道府県及び市区町村の方々に感謝を申し上げるとともに、ここに報告書を掲載します。
平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業
保育所等の建物等の転用に関する調査研究
- 事業目的
近年、我が国では、女性の就業率の上昇を受け、急速に保育所等の整備を進めている。一方で、人口は減少傾向にあり、なかでも年少人口の大幅な減少が見込まれている。そのため、今後、子どもの数の減少により保育所等の数が余る地域が出てくることが想定されるが、保育所等の建物等整備には公費が投入されていることから、こうした地域においても、保育所等の建物等が引き続き公的な用途に活用されることが求められる。本事業は、保育所等の建物等を他の用途に転用すること(=転用)が円滑に行われるための方策・留意点について、整理・分析を行おうとするものである。 - 事業概要
本事業では、主に、① 保育所等と他の福祉関係施設等の建物・設備に係る基準の比較・分析、② 保育所等の他の用途への転用に関する実態調査としてアンケート調査とヒアリング調査を行った。①については、福祉施設等を中心に転用が想定しうる施設を洗い出し、保育所等とこれらの法令等による建物・設備の基準を比較・分析し、施設ごとに転用のしやすさを評価した。②では、事例の発掘のために全国の市区町村1,741か所にアンケートを行い、得られた回答の中から他の福祉関係施設への転用事例20件につき、より詳しい内容や転用に際しての課題等についてヒアリングを行った。 - 事業実施結果及び効果
保育所等の転用事例はこれまでほとんど調査がされておらず、その実態は明らかになっていなかった。今回、本事業で全市区町村へのアンケートを行ったところ、相応数の事例(753施設、うち廃園舎・閉園舎が668施設、余裕教室(空き教室)が85施設)が存在することが確認できた。転用後の施設の活用状況をみると、行政が活用する施設/民間が活用する施設(貸付/有償譲渡/無償譲渡)、通所系の施設/入所系の施設、高齢者向け施設/障害者向け施設/子ども向け施設、単体の機能を有する施設/複数の機能を有する複合施設など、それぞれ異なった特徴をもつ施設が、全国でバリエーション豊かに展開されていることがわかった。
小・中学校に比べて保育所等は、施設がコンパクトかつ平屋建てが多いためにバリアフリー性に優れているといった面で転用しやすい建物であると考えられる。本事業で紹介した保育所等の転用事例がヒントとなり、転用に取り組もうとする自治体が増えれば、公費が投入されている建物等の有効活用という点で有益である。同時に、今後、子どもの数が減少したときに保育所等が余るのではないかという懸念から新規整備に二の足を踏んでいる自治体にとって、将来の転用の可能性について道筋が見えることで、転用を念頭に置いた保育所等の新規整備が促進されることも期待できる。
本件に関するお問い合わせ
公共デザイン本部 医療・福祉チーム
TEL:03-6214-4613